夏ふかみ玉江に繁る葦の葉のそよぐや船の通ふなるらん(藤原忠通)

今日も千載集から、珍しい題で詠まれた歌をご紹介しよう。詞書には「水草隔船といへる心をよみ侍りける」とあるので、題はそのとおり“水草を隔てる船”だ。歌には…『夏も盛りの美しい入り江で繁る葦、その葉がそよいで、ああ船が通っているのだ』とあり、水草というからてっきり睡蓮などを想像したが、ここでは葦の葉が歌われていた。確かに和歌において川辺の定番は葦であろう、しかし個人的にはもう少し発想を変えてほしいところだ。まあいずれにせよ上流貴族の風流な水遊びの風景である。作者は藤原忠通、従一位で摂政たる人の詠みぶりだ。

(日めくりめく一首)

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