吉野山こぞの枝折りの道かへてまだ見ぬかたの花をたづねむ(西行)

そろそろ桜も散り始めた。春夏秋冬四時を越えてようやく出会えた花の中の花、次に相見るのはいつであろうか? もちろん一年後、また苦しい年月を経ねばならない… と、普通の人間は安易に考えることだろう。だがこの人は違う、西行という風狂人は。
『吉野山の去年の枝折りの道を変えて、まだ見ていない方の桜を探しに行ってやろう!』。西行が都の歌人と徹底的に違うのはこの自由だ、おのれの欲望に任せてどこまでも追っかけてゆく執念だ。花に病んで心は枯山をかけ廻る!※ しかも枝折りの道なんて、ヘンゼルとグレーテルじゃないんだから。西行が一度山に入ったら、次の春まで会えないかもしれない。

※「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」(芭蕉)

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