冬の夜は天ぎる雪に空さえて雲の浪路に凍る月影(宜秋門院丹後)

なるほど今日のような歌も採られていると思えば、新勅撰集だって決して悪くない。『冴え冴えとした冬の夜。一面を曇らせる雪と雲とがまるで白浪となったその間から、月が凍えるように立ち昇ってゆく』。一目でそれとわかる新古今の風情、詠み人は宜秋門院丹後、伯父に源頼政が従妹に二条院讃岐がおる当代きっての女流歌人だ。丹後は九条家に出仕したという、この潔癖たる歌風はだから成しえたのだ。しかし定家は新勅撰に採りながら百人一首ではこの丹後を無視している。丹後しかり俊成卿女しかり、定家はあの百人歌からよほど新古今臭を排除したかったとみえる。

(日めくりめく一首)

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