人目さへ霜かれにける宿なればいとど有明の月ぞ寂しき(具平親王)

『人の訪れまでも霜枯れ(離れ)た宿だから、今朝の有明の月は無性に寂しいよ』。試合開始前にノーサイドの笛が鳴る、今日のはそんなやるせない歌だ。詠み人具平は「ともひら」と読む、文芸に秀でた村上天皇の第七皇子、玉葉集に採られているが「枯れ」と「離れ」の掛詞を主観に交えるなど極めて理知的な歌だ。これがなぜ写実を旨とする玉葉に採られたか? 霜と月に寄せるピュアな恋、二重三重にかさなる淡白い風景にときめいたのだろう。

(日めくりめく一首)

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