五月雨に乱れそめにし我なれば人を恋路に濡れぬべらなり(凡河内躬恒)

『五月雨のように、あなたへの思いに乱れ始めた私は、小泥ならぬ恋路にはまってずぶ濡れです』。「五月雨」は「涙」の暗喩となり「乱れ」という言葉の響きも相まって恋の抒情を掻き立てる。しかし「五月雨」と「乱れ」の掛詞を私は見たことがない、この歌でも「みだれ」は言葉の共鳴が主で、あくまでも「掛詞的」扱いだ。代わりに掛けられているのは「小泥」と「恋路」であるが、これは少々無理強いで、意味が通りづらい。詠み人は凡河内躬恒、描こうとした情景は悪くないが、言葉を使いすぎて難が出だ、もったいない歌だ。

(日めくりめく一首)

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