一重なる蝉の羽衣夏はなほ薄しといへどあつくぞありける(能因)

今も音楽シーンに多様なブームが起こっては消えるように、かつて和歌にも様々な歌風の流行があった。古今、新古今などはそういった視点で語られることも多いが、これらの間を埋める泡沫勅撰集にこそ、多種多様なブームがあったことを知っておきたい。なかでも一大ムーブメントを巻き起こしたのが「俳諧歌」だ。これは古今集にも少なからず見えたが、三代集後に一躍メインストリームに躍り出る。今日の歌もその類だ、『蝉の羽のような一重の夏衣は薄いと言っても、やっぱり暑いぜ、だって夏だろ!!』。衣の縁語である「薄し」から「厚し」を導き、それを「暑し」に掛けている。来世は尽きる、ライムのスキル! 笑わせたもん勝ち、それが俺たち!

(日めくりめく一首)

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