よそへつつ見るに心はなぐさまで露けさまさる撫子の花(光源氏)

さて、今日の一首も源氏物語から。昨日はうら若き玉鬘に色めくエロおやじとなり果てた源氏をご紹介した。しかしかつての「光る君」はどこへ行ってしまったのか? それは「かがやく日の宮」と聞こえた藤壺を亡くした時点で闇に消えてしまったのだ。今日の歌は第七帖紅葉賀より、在りし日の藤壺との贈答歌である。『苦悩にかこつけて見ていますが、心は慰められず涙があふれます。撫子の花よ』。ここで撫子は若宮(後の冷泉帝)を譬える、帝に抱きかかえられたその様を目にして、源氏は密かに冷や汗を垂れる。なんと宮は、自分と藤壺(帝の中宮)の不義によって生まれた子であったのだ! 決して口外できぬ恐るべき罪業、源氏はこの苦悶を慰めようと共犯者たる藤壺に歌を差し向けた。

(日めくりめく一首)

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