ちはやふる神世も聞かず竜田川唐紅に水くくるとは(在原業平)

今日の歌ほど賛否が分かれる歌はあるまい、在原業平の「ちはやふる」だ。定家選集の百人一首に採られ江戸時代には落語の演目に、現代では少女漫画のタイトルを飾り愛好される一方、凡作集の評価甚だしい例の百人一首ではその代表を務める。なんとなれば色好み業平の「らしさ」が微塵もないからだ。古今集の詞書によると「屏風歌※」であるらしい。私たちは業平に伊勢物語でみた躍動を期待しているのだ、決して絵空のおべんちゃらではない。はたして定家はなぜこれを採ったのか? 想像だがかつて熱情を交えた二人(業平、高子)の成れの果てに深いあはれを感じたのだろう。

※「二条の后(藤原高子)の春宮の御息所と申しける時に、御屏風に竜田川に紅葉流たるかたをかけりけるを題にて詠める」

(日めくりめく一首)

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