さまざまに心ぞとまる宮城の野の花のいろいろ虫のこゑこゑ(源俊頼)

さて、さまざまに秋の虫の鑑賞してきたが、いずれにも和歌らしい類型化された様式がはっきりと見て取れた。これは西行のように規定の枠を超えた歌人にとってはどうでもいい話だが、柵の宮廷歌人にはいかんともしがたい問題だったのである。今日の歌人、金葉集撰者である源俊頼にして「いかにしてかは、末の世の人の、めづらしき様にもとりなすべき…」と嘆きを隠し切れない。しかし俊頼は挑んだ、今日の歌はその爪痕のようなもの。『花のいろいろ、虫のこゑこゑ』。童謡ような拙さを感じるだろうか? そういう御仁はぜひ声に出して俊頼の歌を鑑賞してほしい、晴れやかな色と音に包まれた新しい宮城野を感じられるはずだ。

(日めくりめく一首)

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