おのづから涼しくもあるか夏衣ひもゆふぐれの雨の名残に(藤原清輔)

『いつの間にか涼しくなってきたようだ。夏衣の紐を結う、夕暮れの雨の名残で』。上下が倒置されているが、なんということもない歌だ。少しの違和感があると思うが、それは「夏衣」の縁語として選ばれた四句「紐結ふ」に発する。ご理解の通り「夕暮れ」の掛詞となって、涼しさの原因(夕立の雨の名残)に帰結している。もし夕暮れに紐を結う行為が何事か意味をなせば歌も膨らむが、ここでは言葉遊びに留まる。ちなみに和歌で「紐解く」には「愛しい人に逢える」というジンクスを含む。

(日めくりめく一首)

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