嵐ふく真葛が原に鳴く鹿はうらみてのみや妻を恋ふらむ(俊恵)

今日は旧暦の9月9日
よみ人:俊恵 、所収:新古今和歌集

昨日は典型的な鹿の歌をご紹介した。その上で和歌の類型化に対して、古の歌人がいかに挑んだかをご覧に入れよう、俊恵である。『嵐吹く葛一面の野原で鳴く鹿は、葛の葉裏を見たかのように、恨みながらも妻を恋続けているのだろうか』。分かりづらいがルールは守っている、きっちりと鹿は孤独に妻を恋いて鳴いているのだから。難しさの要因は「葛の葉」。これは牡鹿の心情「恨み」を言いたいがために掛詞の「裏見」から逆算して用いられているのだが、本来「恨み」を言うのに「葛」なんてのは全く不要である。しかし! 秋の情景をより秋らしく飾るために俊恵は選んだ。和歌とは難儀な文芸であるが、この面白さに気づくと病みつきになる。

(日めくりめく一首)

→令和の古今伝授(和歌を詠み書くための会、神無月)10/27(日)9:50~11:50