唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ(在原業平)

今日は旧暦の5月13日
よみ人:在原業平 、所収:古今和歌集

いずれ菖蒲か杜若というが、和歌でこのふたつを見分けるのは易しい。説明したが歌に詠まれる菖蒲はいわゆる「花菖蒲」ではなく「根菖蒲」であるため、違いが一目瞭然なのだ。ただ一方で別の問題がある。杜若であるが、これがどこにあるのか分からないのだ。今日の歌をご覧いただきたい、一見すると「長い旅路でくたくたになった着物」を詠んだ歌のようだが、これに杜若が詠まれているのだ。どこに!? 五七五七七それぞれの句頭をつまんでみてほしい、そうすると「か・き・つ・ば・た」と現れるではないか! ちなみにこれを「折句」という。それだけなくこの歌には枕詞、序詞、掛詞、縁語が使われ技法の総合デパートの様を呈する。よって本意は『都に置いてきた妻を思い感じる、遠い旅路の哀切』となる。詠み人の業平には珍しい技巧満載の歌だが、伊勢物語(第九段)を見ると「かきつばたといふ五文字を句の上にすゑて、旅の心をよめ」とあり、友人のムチャぶりに応えた歌だと分かる。

(日めくりめく一首)

→令和の古今伝授(和歌を詠み書くための会、長月)9/22(日)9:50~11:50