さむしろや待つ夜の秋の風ふけて月をかた敷く宇治の橋姫(藤原定家)

今日は旧暦の8月22日
よみ人:藤原定家 、所収:新古今和歌集

『筵を敷いて待つ夜は更けて風も冷たい、月を慰めに独り寝する宇治の橋姫』。これぞまさに定家というような一首だ。言うまでもなく歌は「橋姫伝説」を下敷きにしている、嫉妬に狂った女が鬼になるあれだ。しかし今日の歌でも分かるように和歌で橋姫は恋人を忍び待つ、いかにも和歌好みのいじらしい女性に描かれる。実は橋姫が鬼になったのは平家物語の影響だったのだ。
さて本題に戻ると、いかにも定家らしいといったのには理由がある。三句「風ふけて」だ。本来更けるのは「夜」であって決して「風」ではない。こういったシュールな表現こそが「達磨歌」※として、旧来の歌人達は冷ややかな目を向けた。

※「いはゆる露さびて、風ふけて、心の奥、あはれの底、月の有明、風の夕暮、春のふるさとなど、始めめづらしく詠める時こそあれ(中略)かやう列の歌、幽玄の境にはあらず。げに、達磨ともこれらをぞいふべき」(無名抄 近代歌体)

(日めくりめく一首)

→令和の古今伝授(和歌を詠み書くための会、神無月)10/27(日)9:50~11:50