【百人一首の物語】三十八番「忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」(右近)

三十八番「忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」(右近) この歌、引かれた拾遺集には「題しらず」となっていますが「大和物語」の八十四段に「女、男の忘れじとよろづのことをかけて誓ひけれど忘れにけるのちにいひ...

【百人一首の物語】三十七番「白露に風のふきしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞちりける」(文屋朝康)

第三十七番「白露に風のふきしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞちりける」(文屋朝康) 文屋朝康は六歌仙のひとり、文屋康秀の子です。ではありますが、詳しいことはあまりわからない謎の歌人。勅撰集には三首採られていますが、いずれも秋...

【百人一首の物語】三十六番「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいずこに月宿るらむ」(清原深養父)

三十六番「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいずこに月宿るらむ」(清原深養父) 古典和歌はつまらないという人に言わせると、その理由の最たるは「理知的だから」です。理知というと知識つまり掛詞や枕詞など言葉遊びや見立てや擬人...

【百人一首の物語】三十五番「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける」(紀貫之)

三十五番「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける」(紀貫之) 貫之は古今集をいや古典和歌を代表する歌人のひとりですが、この「百人一首の物語」においては「没落氏族の逆襲」を代表する歌人です。飛鳥・奈良時代に律令...

【百人一首の物語】三十四番「誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに」(藤原興風)

三十四番「誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに」(藤原興風) 松、なかでも「高砂の松」が吉事の象徴であるとは、誰もが知るところでしょう。私の世代ではすでにネタでしかありませんが、結婚式の祝言として「高砂や~」と...

「令和三年歌会始」眞子内親王の歌(烏瓜の色)を読み解く

去る3月26日、コロナウイルスの影響で延期となっていた「歌会始の儀」が行われました。地味な伝統行事が一転、国民の注目を集めるようになったのはもちろん昨年詠まれた眞子内親王の歌が発端です。 「望月に月の兎が棲まふかと思心を...

【百人一首の物語】三十三番「ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ」(紀友則)

三十三番「ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ」(紀友則) この歌は国語の教科書にも採用されていて、ご存知の方も多いのではないでしょうか。穏やかな春のひかりの中で、桜花だけが慌ただしく散ってゆく情景、静かなる...

【百人一首の物語】三十二番「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」(春道列樹)

三十二番「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」(春道列樹) 取ってつけたような風雅であるが、嫌味がない。それは名前のせいだろうか、“春道列樹(はるみちのつらき)”とは歌詠みが宿命というべき美しい名だ。し...

【百人一首の物語】三十一番「朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」(坂上是則)

三十一番「朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」(坂上是則) 三十一番は坂上是則、その名でわかるとおりかの征夷大将軍「坂上田村麻呂」の子孫にあたります。田村麻呂とえば平安時代初期の蝦夷征討において多大な功績を...

【百人一首の物語】三十番「有明のつれなく見えし別れよりあかつきばかり憂きものはなし」(壬生忠岑)

三十番「有明のつれなく見えし別れよりあかつきばかり憂きものはなし」(壬生忠岑) 壬生忠岑は古今撰者の一人。四十一番忠見の父として知られるが、その実彼の出生はベールに包まれており官位も不明、貫之(従五位上)、躬恒(六位程度...

【百人一首の物語】二十九番「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒)

二十九番「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒) ついに古今集撰者がお目見え、凡河内躬恒だ。古今の撰者はあと三人、三十番の壬生忠岑と三十三番の紀友則そしてご存知三十五番の紀貫之であるが、とりわ...

【百人一首の物語】二十八番「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば」(源宗于朝臣)

二十八番「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば」(源宗于朝臣) 「貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之候…」※1とは正岡子規による歴史的文句だが、なにも古今集における“下手な歌よみ”は貫之に限ら...

【百人一首の物語】二十七番「みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ」(中納言兼輔)

二十七番「みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ」(中納言兼輔) 古典などというとなにやら深淵広大なる山脈を思わせるが、存外知ってしまえば近所の裏山のごとく身近な存在に変わるだろう。この中納言兼輔(藤原兼輔)...