埋れ木の花さく事もなかりしに身のなる果ぞ悲しかりける(源頼政)

花の文字が見えるが季語にならない、埋れ木となって果てる我が身を譬えた源頼政の辞世歌だ。頼政は平治の乱に平家方として加わり清盛政権において従三位に昇った。しかし源氏の魂は朽ちず以仁王を伴って挙兵、宇治川の戦いに敗れ、最後は...

窓ちかき竹の葉すさぶ風の音にいとど短きうたたねの夢(式子内親王)

『窓ちかくの竹の葉は風に遊ばれて、今何時だろう? うっすら夢を見たような、おぼつかない夏の夜』… 夏の夜の寝苦しさは昔も今も変わらぬとみえて、やはり全く違うようだ。 現代の都市部は冷めやらで、夜の最低気温が摂氏25度以上...

橘の匂ふあたりのうたたねは夢もむかしの袖の香ぞする(俊成卿女)

昔の人を思い出すという花橘の香り、嗅いだことがあるだろうか? 梅や菖蒲もそうであろう、確かにリアルな自然を経験していた方が歌の共感力は高まると思う。しかしそんなもんなくたって、いやかえってないほうが歌に陶酔できる場合があ...

五月待つ花橘の香をかけば昔の人の袖の香ぞする(よみ人知らず)

「花橘」が詠まれたこの歌、古典ファンであればそらんずる方も多かろう。古今集では題知らず、よみ人知らずで採られるが、伊勢では第六十段に「むかし男(業平)」の歌として物語が載る。詳細は出所に譲るが、女(元妻)が酒の肴に出した...