【百人一首の物語】九十一番「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む」(後京極摂政前太政大臣)

九十一番「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む」(後京極摂政前太政大臣) 良経は藤原兼実の次男、ちなみに兼実は五摂家の一つである九条家の祖であり、良経は「九条良経」とも表されます。天台座主で歌人として...

【百人一首の物語】九十番「見せばやな雄島のあまの袖だにもぬれにぞぬれし色はかはらず」(殷富門院大輔)

九十番「見せばやな雄島のあまの袖だにもぬれにぞぬれし色はかはらず」(殷富門院大輔) わかりづらい歌ですよね? それはまずこれが本歌取りの歌だからです。ということで先に典拠となった歌をご紹介しましょう。 「松島や雄島の磯に...

【百人一首の物語】八十九番「玉の緒よ絶えなば絶ねながらへば忍ぶることのよはりもぞする」(式子内親王)

八十九番「玉の緒よ絶えなば絶ねながらへば忍ぶることのよはりもぞする」(式子内親王) 百人一首には女性歌人が二十一人採られていますが、皇族は思いのほか少なくて二番の持統天皇と八十九番の式子内親王のみです。持統天皇は天智天皇...

【百人一首の物語】八十八番「難波江の芦のかりねのひとよゆゑ身をつくしてや恋わたるべき」(皇嘉門院別当)

八十八番「難波江の芦のかりねのひとよゆゑ身をつくしてや恋わたるべき」(皇嘉門院別当) 既視感のある歌ですがそれもそのはず、同じ百人一首の十九番※1と二十番※2をあわせたパクリ歌ではありませんか。これは作者たる皇嘉門院別当...

【百人一首の物語】八十七番「村雨の露もまだひぬ真木の葉に霧立のぼる秋の夕暮れ」(寂蓮法師)

八十七番「村雨の露もまだひぬ真木の葉に霧立のぼる秋の夕暮れ」(寂蓮法師) さらに続く坊主は寂連です。鎌倉新仏教の隆盛はまだちょっと先ですが、歌において時代はすでに中世です。寂連は俗名を藤原定長、叔父であった藤原俊成の養子...

【百人一首の物語】八十六番「嘆けとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな」(西行法師)

八十六番「嘆けとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな」(西行法師) 坊主歌人が続きます、その名は西行。西行は人気、実力ともに抜群で、昔も今も風流人の尊敬と憧憬を集めています。その魅力はなんといっても「旅」でしょう...

【百人一首の物語】八十五番「夜もすがらもの思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり」(俊恵法師)

八十五番「夜もすがらもの思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり」(俊恵法師) 寝室の扉の隙間。そこは本来、愛しい人が訪れる希望の通い路である。しかし訪れがないとなれば一転、底知れぬ絶望へと続く蝦蟇口となる。ああ、...

【百人一首の物語】八十四番「ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞいまは恋しき」(藤原清輔朝臣)

八十四番「ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞいまは恋しき」(藤原清輔朝臣) 藤原清輔は七十九番の顕輔の次男。父亡き後に六条藤家を継ぎ、前歌、御子左家の俊成とは宮廷歌壇のライバルとしてしのぎを削りました。その...

【百人一首の物語】八十三番「世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる」(皇太后宮大夫俊成)

八十三番「世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる」(皇太后宮大夫俊成) 俊成といえば言わずもがな平安末期歌壇の重鎮、後白河院の下で「千載和歌集」を撰進し、後鳥羽院の下では「千五百番歌合百首」などを詠進するなど...

【百人一首の物語】八十二番「思ひわびさても命はある物を憂きにたへぬは涙なりけり」(道因法師)

八十二番「思ひわびさても命はある物を憂きにたへぬは涙なりけり」(道因法師)  「つれない恋に思い悩みながらも、それでも生きながらえている私は、つらさに堪えきれずしぜんと涙が流れます」 歌にある「わぶ」は、今ではほとんど「...

【百人一首の物語】八十一番「ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる」(後徳大寺左大臣)

八十一番「ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる」(後徳大寺左大臣) 「ほととぎすが鳴いている方を見たら有明の月があった」。なんのひねりもない、ただそれだけの歌です。題は「暁聞郭公(暁に郭公を聞く)」という...

【百人一首の物語】八十番「長からむ心もしらず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ」(待賢門院堀河)

八十番「長からむ心もしらず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ」(待賢門院堀河) 作者の待賢門院堀河はその名が表すとおり、鳥羽天皇の中宮である待賢門院璋子に出仕した女房です。院政期の代表的な女流歌人で「久安百首」の作者にも名...

【百人一首の物語】七十九番「秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ」(左京大夫顕輔)    

七十九番「秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ」(左京大夫顕輔)     崇徳院歌壇の代表格が、この左京大夫顕輔こと藤原顕輔です。彼の家は「六条藤家」といって、父...

【百人一首の物語】七十八番「淡路嶋かよふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚ぬ須磨の関守」(源兼昌)

七十八番「淡路嶋かよふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚ぬ須磨の関守」(源兼昌) 七十六番から崇徳院歌壇ゆかりの歌人が採られ、顕輔、堀川らへと続いてくのですが、その中ほどにこの源兼昌が置かれているのは、ちょっと理解に苦しむ配列です...

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