十三番「筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞつもりて淵となりぬる」(陽成院)~ 百人一首の物語 ~

十三番「筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞつもりて淵となりぬる」(陽成院) ようやく恋歌らしい恋歌が登場、陽成院の一首だ。採られたのは後撰集、詞書きには「釣殿の皇女につかはしける」とありラブレター代わりの歌だとわかる。単純明...

十二番「天つ風雲のかよひ路吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ」(僧正遍照)~ 百人一首の物語 ~

十二番「天つ風雲のかよひ路吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ」(僧正遍照) 十二番に登場するは僧正遍照、ここに最後の六歌仙が登場し“伝説歌人”の章は区切りとなる。 ところで仮名序には「僧正遍昭は歌のさまは得たれどもまこと...

十一番「わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟」(参議篁)~ 百人一首の物語 ~

十一番「わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟」(参議篁) 蝉丸に続いて採られたのは参議篁、実名を小野篁という。ちなみに参議とは中納言に次ぐポジション、これ以上を公卿と言って最高幹部の一員をなす。ところで...

十番「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」(蝉丸)~ 百人一首の物語 ~

十番「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」(蝉丸) 「紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ」。孤高のひねくれ者、藤原定家の名文句であるがやはりその人らしいというべきか。平凡は喜撰、小町と続けてきたら遍照、業平とやりそう...

九番「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」(小野小町)~ 百人一首の物語 ~

九番「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」(小野小町) 百人一首のなかでも白眉たる一首がこれだ、九番「花の色は」である。この歌に出会って古典和歌の魅力に憑りつかれた御仁は相当いると思う。なぜそう...

八番「わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり」(喜撰法師)~ 百人一首の物語 ~

八番「わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり」(喜撰法師) さて、ふたたび謎の歌人が登場、喜撰法師である。その名、百人一首に採られた歌からも坊主であることはわかる。古今集仮名序において六歌仙の一人に祀り上げ...

七番「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」(阿倍仲麻呂)~ 百人一首の物語 ~

七番「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」(阿倍仲麻呂) 百人一首のなかでもいや真砂のごとき和歌にあって、これほど愛唱される歌はないだろう、七番「天の原」である。 作者仲麻呂はあらためて説明するまでもない...

六番「かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」(大伴家持)~ 百人一首の物語 ~

六番「かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」(大伴家持) 大伴家持といえばその歌が万葉集に四百七十首ほど採られ、実質的な編纂者と目される人物。政治家としては受難の道を歩んだが、歌人として万葉の草々を文芸...

五番「奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき」(猿丸太夫)~ 百人一首の物語 ~

五番「奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき」(猿丸太夫) 百人一首に深刻な撰歌不審を招いた要因のひとつが、正体不明歌人の存在だろう。天智・持統天皇に始まり、歌聖人麻呂、赤人と流麗にながれてきたものが突然、猿...

四番「田子の浦にうち出てみれば白妙の富士の高嶺に雪はふりつつ」(山部赤人)~ 百人一首の物語 ~

四番「田子の浦にうち出てみれば白妙の富士の高嶺に雪はふりつつ」(山部赤人) 古今集仮名序では人麻呂と並び評される歌の聖、かの大伴家持をして「山柿の門」と憧憬をもって讃えられるが、これは少々色がつきすぎだろう。やはり柿本人...

三番「あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」(柿本人麻呂)~ 百人一首の物語 ~

三番「あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」(柿本人麻呂) 序で述べたが、あらためて百人一首とは「平安王朝の物語」である。これを章立てした場合、冒頭から十二番まではさしずめ「王朝の幕開けと伝説歌人」...

二番「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」(持統天皇)~ 百人一首の物語 ~

二番「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」(持統天皇) 持統天皇はご存知のとおり天智天皇の娘である。叔父である天武天皇の妃となり草壁皇子を生んだ。天智・持統のように百人一首には親子がなんと十八組、三十五人も存...

一番「秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ」(天智天皇)~ 百人一首の物語 ~

一番「秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ」(天智天皇) 言わずもがな、百人一首の一番歌である。「後撰和歌集」秋中に収められるが「万葉集」巻十において類歌がみえる※1。五穀豊穣に言寄せる理想的天皇を仰いで...