三十四番「誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに」(藤原興風)~ 百人一首の物語 ~

三十四番「誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに」(藤原興風) 松、なかでも「高砂の松」が吉事の象徴であるとは、誰もが知るところでしょう。私の世代ではすでにネタでしかありませんが、結婚式の祝言として「高砂や~」と...

三十三番「ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ」(紀友則)~ 百人一首の物語 ~

三十三番「ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ」(紀友則) この歌、百人一首のなかでも格別の一首と目される。穏やかな春のひかりの中で、花だけが慌ただしく散ってゆく情景、素直な写生に共感を寄せつつも頂いた評点は...

三十二番「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」(春道列樹)~ 百人一首の物語 ~

三十二番「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」(春道列樹) 取ってつけたような風雅であるが、嫌味がない。それは名前のせいだろうか、“春道列樹(はるみちのつらき)”とは歌詠みが宿命というべき美しい名だ。し...

三十一番「朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」(坂上是則)~ 百人一首の物語 ~

三十一番「朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」(坂上是則) 三十一番は坂上是則、忠岑に続き有明の月であるがおもしろいのはその詠まれ方、前回ご紹介したように“有明月”は男女の別れを伴って詠まれるのが通例だが、...

三十番「有明のつれなく見えし別れよりあかつきばかり憂きものはなし」(壬生忠岑)~ 百人一首の物語 ~

三十番「有明のつれなく見えし別れよりあかつきばかり憂きものはなし」(壬生忠岑) 壬生忠岑は古今撰者の一人。四十一番忠見の父として知られるが、その実彼の出生はベールに包まれており官位も不明、貫之(従五位上)、躬恒(六位程度...

二十九番「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒)~ 百人一首の物語 ~

二十九番「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒) ついに古今集撰者がお目見え、凡河内躬恒だ。古今の撰者はあと三人、三十番の壬生忠岑と三十三番の紀友則そしてご存知三十五番の紀貫之であるが、とりわ...

二十八番「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば」(源宗于朝臣)~ 百人一首の物語 ~

二十八番「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば」(源宗于朝臣) 「貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之候…」※1とは正岡子規による歴史的文句だが、なにも古今集における“下手な歌よみ”は貫之に限ら...

二十七番「みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ」(中納言兼輔)~ 百人一首の物語 ~

二十七番「みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ」(中納言兼輔) 古典などというとなにやら深淵広大なる山脈を思わせるが、存外知ってしまえば近所の裏山のごとく身近な存在に変わるだろう。この中納言兼輔(藤原兼輔)...

二十六番「小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ」(貞信公)~ 百人一首の物語 ~

二十六番「小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ」(貞信公) 平安時代とはまさに表向き平安であって、その前半、歴史に残る武力紛争は平将門、藤原純友の乱くらいであった。この時代の権力はもっぱら謀略によって定ま...

二十五番「名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな」(三条右大臣)~ 百人一首の物語 ~

二十五番「名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな」(三条右大臣) 「王朝の幕開けと伝説歌人」、「失意に乱れる純血の貴公子」と続いた王朝物語はここらで新たな章を開く、それはさしずめ「聖帝の輝き」とでも言う...

二十四番「このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」(菅家)~ 百人一首の物語 ~

二十四番「このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」(菅家) 大江千里に続いて学者がご登場、菅家こと菅原道真である。ところで大江の血筋は栄えて後には大江匡房(百人一首では権中納言匡房)なる異才も生んだ、和泉式部...

二十三番「月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身一つの秋にはあらねど」(大江千里)~ 百人一首の物語 ~

二十三番「月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身一つの秋にはあらねど」(大江千里) 念のため断っておくが千里は「ちさと」と発する。間違って「せんり」などと読めば格好悪いふられ方をされてしまうやもしれんのでご注意いただきたい...

二十二番「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ」(文屋康秀)~ 百人一首の物語 ~

二十二番「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ」(文屋康秀) 「和歌」というと大抵の人間が貴族の雅な恋愛や美しい四季への真心のみで仕上がっているかのように捉えている。ちまたの指南書がそのように喧伝している...

二十一番「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」(素性法師)~ 百人一首の物語 ~

二十一番「今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」(素性法師) 素性法師の父はあの僧正遍照、桓武天皇の曾孫にあたり確かな血統ゆえ殿上人にまで昇る。しかし父の助言もあって若くして出家、その後は「歌」をつうじ...