「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」に登場し、にわかに注目を集めるシャリア・ブル。そして、同シリーズで稀代の悪役として名を馳せるパプテマス・シロッコ。劇中彼らは「ニュータイプ」と呼ばれる存在であり、さらには共に「木星帰りの男」という共通点を持つ。
木星に何があるのか? その答えは、スタンリー・キューブリック監督の傑作「2001年宇宙の旅」に見えるだろう。
2001年、人類は「月のモノリス(TMA-1)」が信号を発する彼方へと旅立つ。途中、反乱を起こした人工知能「HAL9000」との生存競争に打ち勝った船長であるデヴィッド・ボーマンは、ついに木星の衛星軌道へ到達、そこで目にしたのは巨大なモノリスであった。ボーマンがそれに触れた瞬間、彼は新たなる存在、「スター・チャイルド」へ進化、眼下に地球を見つめるシーンで幕は閉じる。つまり木星には、人類の進化を促す神秘があるというのだ。
「2001年宇宙の旅」といえば、昨今ではAIの急激な進化によって「HAL9000」の暴走そして恐怖が引き合いに出される。しかし、映画のテーマはそこではない。それは人類の究極の進化。モノリスに触れたヒトザルは知性を獲得、やがて月へと進出した人類はついに木星へ到達する。そこで人類は、新たな存在へと生まれ変わるのだ。
この物語では、人類の進化が屈託なく描かれているがどうだろう、封切りから50年近く経た現代では、いささか短絡的なストーリと批判もされそうだ。しかしこの作品には、それらの声を黙らせる圧倒的な力がある。モノリスに象徴され、宇宙船内外に見られる洗練されたデザイン、背景で荘厳に響くリヒャルト・シュトラウスによる交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」。映像と音楽による陶酔感、なにより言語化できない神秘がこの映画にはある。
もはやこの作品自体がモノリスなのだ。目に触れた者は、おのずから感化される。これは個人的な過大評価ではなく、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されたことが、それを証明する。
人生の豊かさとは、このモノリスに出会えたかどうかだろう。私にとっての「木星のモノリス」は、「古今和歌集」と「高野切れ」だ。歌と書——これらが流れる大河、すなわち歌道とのめぐり合いが、私の人生をすっかり変えてしまった。
願わくば、この感動を共有したい。歌道のモノリスには次のように刻まれていた。これを「二条流歌道の心得」として記す。
一.神代より始まる敷島の道を尊び、足跡を重ねる
一.初代勅撰集『古今和歌集』の姿を理想とする
一.自分より他者・自然に哀切のこころを寄せる
一.古歌をもって師となす
一.歌には古来からの「やまと言葉」のみを用いる
一.「詠み・書き・歌う」の三位一体の収斂に励む
一.後世への継承を使命とする
(書き手:内田圓学)
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