【百人一首の物語】四十四番「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし」(中納言朝忠)

四十四番「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし」(中納言朝忠)

朝忠は名のとおり“中納言”ということでかなりのお偉方。父は二十五番、三条右大臣定方であるので、なるほどこの世は血筋こそがものをいうということです。

さて歌はまた「恋」なのですが、じつはこの歌、先にご紹介した「天徳内裏歌合」で披露されたものでした。実は朝忠、本歌合の左の一番手で登場しています。どういうことか? つまりこの連中のなかで一番偉かったということです。ついでにこの歌合の勝敗を振り返ると、四十番の平兼盛が4勝5敗二引分け、四十一番の忠見が1勝2敗1引分けであったのに対し、朝忠はなんと6勝1敗とばつぐんの好成績でした。 いや~、さすが定方の子息! 風流心までも受け継いでいますなぁ、と言いたいところですが、これはあんに“忖度”のなせる技。ですから先にご紹介した“忠見が歌合に敗れて憤死した”、なんてエピソードはちょっと眉唾と思っちゃうんですよね。

とはいえ朝忠の歌、「終恋」という題で詠んだものでしたが、いわゆる“題詠臭”がなく悪い歌ではないことは付け加えておきましょう。

(書き手:歌僧 内田圓学)

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