さくら花夢かうつつか白雲のたえてつれなき峰の春風(藤原家隆)

『桜の花が見えたのは夢か現実か。白雲の花は消えてしまった。峰には花を散らす春風が吹いている』。難解な新古今歌のなかでも特にそうであるような歌だ。詠み人の家隆は定家のライバルとして知られるが、どちらがより新古今歌的かと問わ...

さくら花ちりぬる風のなごりには水なき空に浪ぞたちける(紀貫之)

『桜の花が散った風の後には、水のない空に浪が立っているようだ』。適訳はこうだが少々説明を加える。まず花の色を見立てて「白浪」とする場合がある、これは桜の花が風に舞い散って白浪が立っているように見える、水なんてない空なのに...

花さそふ比良の山風ふきにけり漕ぎゆく舟のあと見ゆるまで(後鳥羽院宮内卿)

宮内卿はわずか20歳にして亡くなったと言われる夭折の歌人、残る歌も少ないがそれでも勅撰集に四十三首採られた名手だ。彼女の歌風は唯一無二といった感じで、独特の感性が際立っている。表現多彩な現代短歌と比較してしまえばさほどで...

【和歌マニア(第80回)】 「令和」の出展元(梅花の宴「序」)は極めて漢詩的発想だった!

ついに来たか和歌ブーム!? 今回は新元号「令和」の出展元となった梅花の宴「序」をご紹介します。初の国書由来とされているがその内容は極めて漢詩的!? 和歌を愛するうっちーならではの斬新な視点で令和に切り込みます! 和歌の型...

万葉集のカオス! その特徴(歌風)と本当の魅力を実例で知る

先日万葉集の特徴をひとくくりに「玉石混交」と言いました。ようするにカオスなのです。 →関連記事「万葉集の代表歌、歌風、選者そして歴史をざっと知る!」 今回はこれを実例をもってご紹介しましょう。 読み終わった後、きっとあな...

今日こずは明日は雪とぞ降りなまし消えずはありとも花と見ましや(在原業平)

『お前んちの桜、今日来なければきっと明日は雪のように散ってしまうだろうよ。そりゃ本物の雪じゃないから消えないと思うけど、そんなの花と言えるかい?』 唐突感があったと思う。それもそのはず、この歌はある女主人への詠みかけに応...

吉野山こぞの枝折りの道かへてまだ見ぬかたの花をたづねむ(西行)

そろそろ桜も散り始めた。春夏秋冬四時を越えてようやく出会えた花の中の花、次に相見るのはいつであろうか? もちろん一年後、また苦しい年月を経ねばならない… と、普通の人間は安易に考えることだろう。だがこの人は違う、西行とい...

花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに(小野小町)

昨日の友則に続き、百人一首にも採られた桜歌である。この歌で和歌の魅力に憑りつかれた人も多いかもしれない、なぜなら私がその一人なのだ。和歌は「詞」と「心」によって構成される、そしてこのふたつがバランスしてこそ歌は「いい歌」...

花の上にしばしうつろふ夕づく日入るともなしに影きえにけり(永福門院)

これぞ京極派! というべき手本のような歌だ。『桜の花びら、そのうえにやわらかく夕日が差す。それは束の間、日は瞬く暮れてその影は消えてしまった』。微妙で繊細、京極派が歌わなければだれも気づかなかったような美。これを行き詰ま...

万葉集の代表歌、歌風、選者そして歴史をざっと知る!

新元号「令和」の出典となったことで、一躍脚光を浴びた「万葉集」。今回はこれから古典和歌に親しもうという方に向け、万葉集の秘密をお話しします。ぜひご一読ください。 和歌の型(基礎)を学び、詠んでみよう! 代表的な古典作品に...