夕されば衣手寒しみ吉野の吉野の山にみ雪降るらし(よみ人知らず)

二十四節季の「大雪」も過ぎて、朝夕の空気はすっかり冬の厳しさだ。『夕方になると袖のあたりから冷えてくる。きっと吉野山では雪が降っているのだろう』、「吉野」といえば桜のイメージが強いかもしれないが、百人一首の坂上是則歌※に...

令和元年秋 時代不同歌合

「令和元年秋 時代不同歌合」は左方に貫之ら古今和歌集歌人を、右方に和歌DJうっちーを配し、秋期題詠を番えた全十二番の紙上歌合。詞花を目的として編まれたので、勝負の判定はされていない。 ※「令和元年 秋の和歌文化祭」にて披...

むかし思ふ小夜の寝覚めの床さえて涙も凍る袖の上かな(守覚法親王)

今日の詠み人は守覚法親王。以仁王、式子内親王とは同腹兄弟で歌に通じた。その功績は自詠歌よりパトロン的目利きだろう、頻繁に歌会を催し家集を献上せしめ千載そして新古今へ流れる風を醸成した。「仁和寺宮五十首」(守覚は仁和寺第六...

岩間には氷の楔打ちてけり玉ゐし水もいまは漏りこず(曽根好忠)

なんと残酷な季節だろう、花はおろか水さえも失せる冬という季節は。『岩間に氷の楔が打ち込まれたようだ、水滴も今は漏れてこない』。折々の花に心を寄せた平安歌人、森羅万象が氷に閉ざされてしまった今、いったい何を歌えばいいのか?...

高校必修科目に古典は必要である「和歌所的」理由

先日興味深いブログ記事を見つけました。タイトルは『「高校必修科目に古典は必要か」あなたはどう思う?』です。去る2019年1月に明星大学人文学部日本文学科が主催した「古典は本当に必要なのか?」というシンポジウムの討論内容を...

いつしかと冬の景色にたつた川紅葉閉ぢませ薄氷せり(藤原俊成)

『いつの間にかすっかり冬景色になった竜田川、散り落ちた紅葉を閉じ込めて薄く氷が張っている』、「たつた」に冬が「立つ」と「竜田川」を掛け、技巧と趣向が絶妙にバランスした見事な一首、現代人が受ける共感は古今そして新古今をも上...