一首一会、和歌で知るべし有難さ
去る令和元年の暮れ。ある映画を見たのですが、これが良かったです。ちなみに続三部作が完結した某宇宙スペクタクルではありません(これはこれで満喫しましたが…)。むしろそれと比べるとごく平凡な日常の物語、その名も「日日是好日」...
去る令和元年の暮れ。ある映画を見たのですが、これが良かったです。ちなみに続三部作が完結した某宇宙スペクタクルではありません(これはこれで満喫しましたが…)。むしろそれと比べるとごく平凡な日常の物語、その名も「日日是好日」...
その名が期待感を煽るが今日も無念、凡作に沈んでしまった… 藤原公任である。「雪」を「花」とする見立ては悪くない、いや確かに平凡の極みなのだが、このルーチンこそが和歌であることはもうご承知だろう。問題のひとつは歌の「調子」...
満を持して放送されたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の初回視聴率は19.1%だったそうです。昨年の「いだてん」の年間平均視聴率が史上最低の8.3%であったようですから、驚異的な復権を遂げたことになりますね。要因には4Kで撮...
今日あたり二十四節季では「大寒」の時分だろう。寒さが最も厳しくなるころとされるが、実のところ春(立春)はもう目の前である。詠み人は紀貫之、一昨日の歌は雪を花と見る妄想であったが、今日のは早咲きの梅が確かに綻んでいる。『梅...
このような歌を「呆あきれ返つた無趣味」と蔑もう、明治の自称革新的な歌人たちは。そのまま取ると『木々に雪が降って、梅の花と見分けがつかない』という趣向だが、狙いは「木」と「毎(ごと)」つまり偏と旁を合わせて「梅」が咲くとい...
さて、今日の歌ではまたもや雪が降っている。雪歌は一通り終えたのではと思うかもしれないが、今日よりの雪は以前のそれではない。『草や木々が冬ごもりしている折、雪が降って春も知らない花が咲いた!』。春を慕うばかり、詠み人の目に...
今日の歌も面白い、「霰(あられ)」だ。『寒々とした夜、真木の屋根に霰が打ち付ける。心をもっと痛めよと言わんばかりに』。詞書きに記された題、「閑居聞霰」に適った隠遁の侘しさが描かれている。 これまででお気づきかもしれないが...
京極派の歌は今でも新鮮な聞き心地がする、それは描いた風景もさることながら用いた単語に由る。昨日の「三日月」しかり今日の「星」もその一つだ。これまた驚かれるかもしれないが京極派が現れる以前、和歌に詠まれる天体といえば「月」...
玉葉集に採られた永福門院の歌、京極派の筆頭らしく簡潔明瞭な自然詠である。注目すべきは「三日月」、意外に思われるかもしれないが古典和歌において月の「形」が詠まれることは稀だ。見えるか見えぬか、その点のみが和歌における月の肝...
『雲の果てから散ってくる雪は、月にあるという桂の木の花ではあるまいか』。雪を花びらに見立て次の季節を慕うのは、伝統の域を出ないつまらぬ詠みぶりと言えよう。しかしフォービズムよろしく、狂言綺語で迫りくる御子左一派の歌にはな...
家隆そして俊成卿女を見た後ではいささか物足りなくもあろう、藤原清輔の冬の月である。新風甚だしい新古今歌人らは度を過ぎて酷寒の大景を求めたが、清輔はというと月、その美しさのみに焦点を絞って繊細なワンカットを写し取る。なるほ...
新古今歌人の代表格は定家かもしれないが、その歌風を極めたのは家隆そして俊成卿女であろう。『霜深い夜。凍てついた枕は氷が張って、有明の月影が映っている』。枕に張った氷は言うまでもなく己の涙である。愛する人間に裏切られた慟哭...
地獄には八寒地獄という冷徹で恐ろしい世界があるという。そんな恐怖を覚えるほど、今日の歌には結氷の極みが描かれている。『夜が冷徹に更けゆく志賀の浦では、浪が凍りついて沖へと遠ざかってゆく。その氷の間から、凍りながら有明の月...