和歌の入門教室 「歌語(歌ことば)」

和歌には厳密なルールがある。
これについて理解するため、和歌独特のさまざまな修辞法を学んできました。
しかし、和歌の強制力は一つひとつの単語にも及んでいる! と言ったら、驚かれるでしょうか?
そうなんです、和歌にはいわゆる「歌語」(歌ことば)という、特別な意味・設定を含有する言葉があるのです。

ただでさえ修辞法や情景設定に縛られているのに、言葉にまでルールがあるなんて、
和歌は同じようなものばっかりになるんじゃないの!? とツッコミがあるかもしれません。
しかし、実のところ「歌語」のおかげで、和歌は多様性を確保しているのです。

例えばこの歌。
「うちしめり あやめぞ香る ほととぎす なくや五月の 雨の夕暮れ」(藤原良経)

五月の雨に濡れたあやめが香る。ほととぎすが鳴いている。
という歌です。だからなに? って感じですよね。
でもこの歌、単なる初夏の情景歌なんてものではなく、沈痛なエレジーなのです。

実は歌中の「あやめ」、邪気を祓うほどの強烈な匂いが設定されています。よって上の句からは、五月雨に湿るむせ返るような不快感が現出されます。
さらに「ほととぎす」には、「夏の到来を告げる」とともに「恋心をエスカレートさせる」という心情が内在。
これら歌語の設定を踏まえると、「慕えども叶わない、けれども愛しさは増していく、鬱々な慕情」といった内容の歌であることが分かります。
歌語にある設定を知っているか否かで、歌の印象がまったく違ってしまいますね。

三十一文字という「短詩型文学」である和歌。
歌語は複雑で深遠なる心の内を歌にするためには必須の技法と言えます。
和歌を鑑賞する、また詠むといった場合にも、常にこの歌語の設定を意識して取り組むようにしましょう。

(書き手:和歌DJうっちー)

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