新しいかな書道「かなグラフィー」とは

かなグラフィーの心

私が指南するのは旧来の「かな書道」ではありません、日常を豊かに彩る「かなグラフィー」です。「かな書道」と「かなグラフィー」における第一の違い、それは作品との向き合い方。

一般的な「かな書道」は所属団体での展覧会などいわゆる「ハレ」の舞台での披露が目的となっており、漢字作品にも負けぬように「大きく(大字かな)」かつ「極端に崩す」ことが当たり前の、一般人を拒絶した閉鎖的で分かりづらい作品ばかりです。

一方の「かなグラフィー」。日常つまり「ケ」に美しさを添えることを目的にした作品は、これ見よがしに飾り立てることはしません。だれの目にも「わかりやすく」「簡素」で「さりげない美」、たとえばふと足元に目をやると気づくような日常に咲く「路傍の花」を目指しています。

「かなグラフィー」作品例

伝統への憧憬

かなグラフィーで推奨する第一の手本は「高野切れ(第三種)」また「粘葉本和漢朗詠集」です。美しくかつ素直で安定的な流線をみせる古筆は、初学者に最適の手本です。また「寸松庵色紙」は平面構成(散し書き)を学ぶ第一級の手本。

これら歴史的にも価値が高く伝説的な手本に倣うことで、かな文字の理解、古の書家への憧憬は一層深まることでしょうし、そしてなにより和歌との一体化に繋がると信じています。

※高野切:十一世紀に書写された「古今和歌集」の最古の写本。紙片が高野山に伝来したことから呼ばれる。筆跡が3種に分かれていることから、便宜上「第一種」「第二種」「第三種」と称される。中でも「第三種」は連綿の美しさが秀逸で字形平明であることから、「かな」を学ぶのに最良の手本とされる。ちなみに第三種で現存するのは、巻十八と巻十九の断簡のみ
※粘葉本和漢朗詠集:「和漢朗詠集』」を上下二冊に書写し,粘葉装としたもの。伝藤原行成筆と伝わるが高野切れ第三種と同筆とされる
※寸松庵色紙:散らし書きの絶品といわれる。茶人の佐久間実勝が京都大徳寺の茶室寸松庵に紙片が伝来したことから呼ばれる

かなグラファーへの道

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