「妄想女子の恋歌日記」~恋自嘲する7月の巻~

●7月7日
今日が何の日だって?
ホント考えたくない
知ってるわよ一年に一度の、でしょ?

願い事はあるよ、もちろん
彼ともっともっと仲良くなりたい

でもどうせ叶わない
わたし、天の川なんて見たことないし

世界中で、こんなに悲しんでんの私だけなんじゃない?
あの彦星だって結局、一年に一度は必ずイチャついてるんだから

612「我のみぞ 悲しかりける 彦星も あはてすぐせる 年しなければ」(凡河内躬恒)

●7月10日
この前の夜、久しぶりに彼とデートしたの
七夕のおかげ? 彦星に謝らなくちゃね

でもね、
始めの頃みたいに楽しめなかった
わたしが言わなきゃ、手も握てくれなかったよ

きっと私なんて
いてもいなくてもいい
かがり火の影みたいなもの

ほんとは寂しいし
すごい甘えたいのに
涙でしか伝えられない

530「かがり火の 影となる身の わびしきは 流れて下に 燃ゆるなりけり」(よみ人しらず)

●7月31日
昨日も彼とあったの
最近はむこうからLINEするようになったし
なんかいい感じかぁなって、たまに思う

でもどっかで、やっぱりダメになるんじゃないかって
いっつも不安になる
とことんネガティブ志向なのかな?

それでもね、やっぱり大好きなの
深く深く生い茂る夏草のように
日ごとに思いが募ってく

明日からは、もっと前向きにいこう

686「枯れはてむ 後をば知らで 夏草の 深くも人の 思ほゆるかな」(凡河内躬恒)

つづく…
(書き手:歌僧 内田圓学)

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