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花札をご存知でしょうか?
やったことはなくても、その絵柄には馴染みがあると思います。

花札の絵柄には、四季折々の景物が描かれています。
1月:松に鶴
2月:梅に鶯
3月:桜に幕
4月:藤に時鳥
5月:菖蒲に八橋
6月:牡丹に蝶
7月:萩に猪
8月:薄に月、薄に雁
9月:菊に盃
10月:紅葉に鹿
11月:小野道風に柳と蛙、柳に燕
12月:桐に鳳凰

2月の梅に鶯、10月の紅葉に鹿などは和歌における景物取合せの王道パターンでもあります。
花札の発祥は安土・桃山時代の「天正かるた」とされ、江戸時代中期には現在使用している花札の形になったそうですが、
古今和歌集で定義された日本美のルールが、庶民の遊びであるかるたにも影響していたことが分かりますね。
和歌の入門教室 特別編 「古今和歌集 四季の景物一覧表」

ただこの取り合わせ、和歌的にはどうしても違和感のあるものがいくつかあります。
まず軽微なところで、6月の「牡丹」、7月の「猪」です。
これらは古今和歌集には見ることができません。まあ、雅な和歌に「猪」が出てきたら驚きますよね。

同様に12月の「桐」も古今和歌集にはない景物です。
「桐の花」であれば俳句の季語にあるようですが、どちらにしても「初夏」の季語なので違和感が残ります。
実は「桐」、「これっきり」という言葉に掛けられて年の最後である12月の絵柄に選ばれたようです。

最大の謎は11月です。
11月の「柳と蛙」、「柳に燕」です。
描かれているのは青々とした柳、落葉の姿には見えません。
なにしろ取合せが蛙と燕ですからね、どう見たって晩春から初夏の景物です。

それがなぜ11月の絵札に描かれているのか?
Google先生に尋ねてみても、腑に落ちる回答を頂けません。

ではその答えを日本美のルールブック、古今和歌集に求めることはできないか?
ちょっと探索してみましょう。

古今和歌集には、「柳」を詠まれた歌が2首あります。
27「浅緑 糸よりかけて 白露を 玉にも貫ける 春の柳か」(遍昭)
56「みわたせば 柳桜を こきませて 宮こそ春の 錦なりける」(素性法師)

いずれも春の歌ですが、これを見てはっと気づきました。
「白露を玉にも貫ける」と「錦なりける」の箇所です。

実はこれ、秋の歌でも使われる見立てなのです。
例えば以下の歌、
222「萩の露 玉に貫かむと とれはけぬ よし見む人は 枝なから見よ」(よみ人しらす)
297「見る人も なくてちりぬる 奥山の 紅葉は夜の 錦なりけり」(貫之)

つまり、私が考えはこうです。
花札の考案者(江戸っ子)になって答えてみましょう。

(ここから江戸っ子↓)
—————————
10月は「紅葉に鹿」と、、
よし、これで1月から10月までの絵柄は決まったね
年の最後の12月は「これっきり」ってことで「桐」にしとくか
われながら洒落た取合せじゃねぇか

そして11月はと、、
やっぱ紅葉にしとくか…って10月に使っちまってるよ!
困ったな、ネタが尽きちまったぞ。。。

11月といえばなんだ?
萩枝を貫く「白露の玉」なんかしゃれてんじゃねぇか? って「萩」も7月に使ってるよ…
一面の「錦」ってのは? ってこれも「紅葉」だしなあ。
なんかねぇかなぁ

お、そうだ!
白露の玉と錦つったら「柳」もありじゃねぇか!

春っぽいけど、まあ細けぇことは気にすんな
要はイメージだよ、イメージ
「柳」に秋を感じるってのが粋ってもんだろ
ついでに蛙と燕も出しちまえ!
オイラって天才かも
—————————

と、かなり強引な妄想にて、「11月の柳の謎」の幕を引かせて頂きます。

(書き手:内田かつひろ)


 
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