「妄想女子の恋歌日記」~恋怪しむ6月の巻~

●6月6日
学校で逢えないから、
私の方から彼の家に来てしまった
「来ちゃった…」ってやつよ

でもいいよね? まがいなりにも私「彼女」なんだから

私的にはけっこう勇気を振り絞った行動だったんだけど
肝心の彼の部屋の灯りは真っ黒、
バイトの時間なのかなぁ…?

あーどうしよう。
帰ろうっかなぁ、もう少し待ってみようかなぁ

あと一分待ったら、彼が来るんじゃないかと思って
ついつい期待しちゃって帰れない

499「あしひきの 山ほととぎす 我がことや 君に恋つつ いねがてにする」(よみ人しらず)

●6月10日
最近、彼がぜんぜん会ってくれない
この前の「来ちゃった作戦」だって、結局失敗だったしね

つき合ってんのに逢えないってどういうことなんだろ
もうっ、ほんとモヤモヤして気持ち悪い感じ!
こんな思い、きっと誰も分かってくれないよね

もし、もし分かってくれるとしたら
ほととぎす

一晩中、お構いなしに鳴いている
あの鳥だけだったりしてね

578「我がことく 物やかなしき ほととぎす 時ぞともなく 夜ただ鳴くらむ」(藤原敏行)

●6月25日
わたし、彼のことぜんぜん知らないかも…
彼が昨日何したって、SNSの方がよっぽど教えてくれるもん

ほんとに私のこと好きなのかな?
付き合うって、冗談だったのかな?

都合のいい女ってことないよね?
それはさすがにムカつくよ!

いや、そんなこと絶対ない、、
だってあの日、本気でギュってしてくたもん!

はぁ~我ながらホントに疲れる、、、
毎晩眠れない堂々めぐり…

起きてたのか夢の中だったのかも分かんない
でも毎朝、濡れた枕に気づいて目が覚める

641「ほとときす 夢かうつつか あさつゆの おきて別れし 暁のこゑ」(よみ人しらず)

つづく…
(書き手:歌僧 内田圓学)

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