「ザ・ビートルズ」で知る万葉集、古今和歌集、新古今和歌集の違い


和歌の歌風、スタイルは大ざっぱに「万葉風」「古今風」「新古今風」と三種類に分けられることが多いです。
これら「万葉集」「古今和歌集」「新古今和歌集」の3つはいわゆる和歌「三大集」と呼ばれ、数ある和歌集のなかでも特に重要視されています。
※ちなみに「三代集」は、「古今和歌集」「後撰和歌集」「拾遺和歌集」のことを指します

天皇が編纂を命じた「勅撰和歌集」が全二十一集あるなかで(万葉集は該当しません)、特にこの三集が重要視されるのには当然理由があります。
それは歴史的なターニングポイントに編纂されたという点も大きいですが、やはり歌風の違いが顕著だからでしょう。

例えば「万葉集」。素朴で力強いスタイルから「益荒男ぶり」なんて言われます。
一方「古今和歌集」の理知的で感情を抑えたスタイルは「手弱女ぶり」と言われ、万葉集と対比されたりします。
「新古今和歌集」に関しては「…ぶり」という言い方は聞きませんが、優美な情景歌が多いことから「絵画的」なんて評されます。

これだけでは歌風の違いが分かりづらいかもしれませんね。
では唐突ですが、誰でも知ってる「ザ・ビートルズ」のアルバムで例えてみましょう。

万葉集を例えるなら「プリーズ・プリーズ・ミー」です。
歴史に冠たるファーストアルバム。憧れのミュージシャン(白楽天など漢詩人でありエルビス・プレスリー)を目標に、素朴でライブ感満天のロックンロールで占められています。

古今和歌集は「ア・ハード・デイズ・ナイト」、「ラバーソウル」。
全曲オリジナル作品で占められ、ついに独自の作風を確立。作曲技術も革新され、後世のミュージシャンへ多大な影響を与えました。

新古今和歌集はさしづめ「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」、「ホワイトアルバム」でしょうか。
現実を超え幻覚を覚える様な実験的な歌が揃います。またアーティストの個性が際立つ反面、全体の統一感が徐々に薄れています。

いかがでしょう、三大集の違いがお分かり頂けたでしょうか?

ん~、まだまだ分かりづらいですね。
やはり具体的な歌を取り上げて違いを比べましょう!

ということで次回、「七夕の歌」で万葉集、古今和歌集、新古今和歌集を比較してみようと思います。

→「七夕の歌で知る万葉集、古今和歌集、新古今和歌集の違い

(書き手:歌僧 内田圓学)

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