無色透明の「雨に色がある」と言ったら驚かれるでしょうか?
しかもそれは四季によって異なる、と言えばなおさら。
でも私には見えるのです、富める雨の彩りがまざまざと!

ただこの色、ぼーっと眺めているだけでは見えてきません。
今回は和歌をつうじて、四季の雨とその色を探ってみましょう。

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春の雨、和歌のそれは「春雨(はるさめ)」といいます。
その色は「エメラルドグリーン」

20「梓弓 おして春雨 今日ふりぬ 明日さへふらば 若菜摘みてむ」(よみ人知らず)
25「わか背子が 衣はるさめ ふるごとに 野辺の緑ぞ いろまさりける」(紀貫之)
新67「雨降れば 小田のますらを いとまあれや 苗代水を 空にまかせて」(勝命法師)

萌え出づる花と太陽。
新たな命に柔らかく注げる雨は、輝く緑色をしています。

夏の雨といえば「五月雨(さみだれ)」、
その色は「ミッドナイトブルー」

153「五月雨に もの思ひをれば ほととぎす 夜ふかく鳴きて いづちゆくらむ」(紀友則)
160「五月雨の 空もとどろに ほととぎす 何を憂しとか 夜ただ鳴くらむ」(紀貫之)
新233「五月雨の 雲の絶え間を ながめつつ 窓より西に 月を待つかな」(荒木田氏良)

哀れひとり、月夜に鳴けるはホトトギス。
慕情を重ねる長雨は、紫がかった深い青色をしています。

晩夏の風物詩「夕立(ゆふだち)」、
その色は「チャコールグレー」

新265「露すがる 庭の玉笹 うちなびき ひとむら過ぎぬ 夕立の雲」(藤原公経)
新266「とほちには 夕立すらし ひさかたの 天の香久山 雲かくれゆく」(源俊頼)
新268「夕立の くももとまらぬ 夏の日の かたぶく山に ひぐらしの声」(式子内親王)

炎天に燃える大地を刹那に滅す暗闇。
憂いを隠さぬ激情的な通り雨は、消し炭色をしています。

「春雨」に対し、秋・冬の雨は「時雨(しぐれ)」です。
その色は「ワインレッド」

260「白露も 時雨もいたく もる山は 下葉残らず 色づきにけり」(紀貫之)
新580「やよ時雨 ものおもふ袖の なかりせば 木の葉の後に なにを染めまし」(慈円)
新584「折こそあれ 眺めにかかる 浮雲の 袖もひとつに うち時雨つつ」(二条院讃岐)

紅葉。峰々は酩酊の頬に染まる。
所かまわず酌してまわる雨は、わがままなワイン色をしています。

さて、このように和歌の様式美の前では、「雨」というひとつ現象とってみても季節で呼び名が違うだけでなく
多様な「色」をも感じ取れることがお分かり頂けたでしょう。

そもそも「色」は、だれがいつどこで見ても同じように捉えられる「絶対的」な現象ではありません。
周囲の光の影響はもちろん、それを認識する自らの感情その時によって千変万化する「相対的」なものなのです。
肝心なのはそれを受け取る積極的な感性。

感性を素直にすれば、
雨に色が見えても不思議ではありませんし、風に色を感じることだって出来るのです。
→関連記事「共感覚と秋風の色

(書き手:内田かつひろ)


 
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