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先日、秋の花と言えば「紅葉」であると書きましたが、いやいや「菊」ではないかというご意見もあるでしょう。
9月9日の重陽の節句を「菊の節句」というくらいですからね。

しかし一般的に「菊」は、なんとも地味な存在に扱われているように思えます。
昔からそうだったのでしょうか?
いやいやそんなことはありません。
菊には栄枯盛衰のストーリーがあるのです。

菊は中国から奈良時代末か平安時代初めに伝わったとされています。
その証拠に「万葉集」には菊の「き」の字も出てこないのです。

平安時代に編纂された古今和歌集では、「秋部」に菊の歌を11首ほど見つけることができます。
これを多いとみるか、少ないとみるか?
秋部の総数は145首です。その中に「女郎花」だけでも13首あると考えると微妙ですね。
まあ主流でないことは確かです。

ちなみに古今和歌集で菊が詠まれた有名な歌といえば、
277「心あてに 折らはや折らむ 初霜の おきまとはせる 白菊の花」(凡河内躬恒)
百人一首にも採られたお馴染みの歌ですね。

もちろん白菊だけでなく黄色い菊もあります。
269「久方の 雲のうへにて 見る菊は 天つ星とぞ あやまたれける」(敏行)
この菊に見立てた「星」ですが、「太陽」ではないかと私は思います。

他にも
270「露なから 折りてかささむ 菊の花 老いせぬ秋の ひさしかるへく」(紀友則)
というように、菊に不老長寿の力をみていました。

これは中国からの言い伝えとされ、中国では菊を蘭、竹、梅と並ぶ四君子の一つと位置付けていました。
ちなみに古今和歌集では、蘭と竹の姿を見ることはできません。
日本文化の面白いところは、本家である中国の文化を無遠慮に受け入れてきたのに、自分達の都合に合わないとバッサリ切り捨てるところですね。

さてそんな菊ですが、鎌倉時代になると一気に脚光を浴びます。
後鳥羽上皇が自らの「印」として愛用したのです。
それが継承され、現代でも「十六八重表菊」が皇室の紋となっています。
菊紋がはいった錦の御旗とえば有名ですよね。

後鳥羽上皇はなぜ菊を愛用したのか?
それは先ほどの君子の話や、花そのものの美しさというのもあったでしょうが、私はその見立てにあったのではと思います。

後鳥羽上皇の時代、実際の権力はすでに鎌倉方に移っていました。
まして上皇は三種の神器の一つ、天叢雲剣を欠いて天皇に即位したというコンプレックスの持ち主です。
そんな人物が力を誇示にはどうするか?
そうです、血統に頼るしかありませんね。

古事記では天皇の血筋は神様に到達するとされます。
祖神、天照大神(あまてらすおおみかみ)。そう太陽の神様です。

その太陽の見立てが「菊」であった。
先ほどの歌にあった「天つ星」を太陽と解釈したのもその理由からです。

こうして後鳥羽上皇以後、菊の存在価値は瞬く間に上昇。武家の家紋にも多く取り入れられました。
菊は数多ある花の頂に上りつめたのです!
ちなみに案外あなたの家紋も菊だったりしませんか?

翻って現代。
冒頭の話に戻りますが、菊は地味な存在に戻ってしまいました。
いくら重陽の節句と言っても、七草の節句(1月7日)、桃の節句(3月3日)、菖蒲の節句(5月5日)、七夕(7月7日)といった他の節句と比べると、その存在感は極めて薄いです。
菊の鑑賞といえば、ある種老齢の趣味の様に位置付けられています。

なぜか?

一つは大日本帝国の時代を経て、菊は悪いイメージを持たれてしまったのかもしれません。
しかしあの桜だって十分悪用されていましたよね。

もう一つは旧暦の問題。
重陽の節句を新暦の9月9日のとすると、菊の見ごろ(10~11月)と季節が合わないのです。
主役不在の節句は風化してしまい、菊の存在感も薄れてしまった。
今や桃の節句も、菖蒲の節句も「ひなまつり」や「子供の日」として認識さていますもんね。

とにもかくにも菊の栄枯盛衰。
五十円硬貨を眺めて思い耽ってしまいました。
(あ、こんなところにもいたんだ! といまさらながら菊を発見)

(書き手:内田かつひろ)

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