古今和歌集の秋といえば、やはり「秋の七草」ですよね。
七種それぞれの特徴を捉えたユニークな歌がラインナップされています。
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しかし、新古今和歌集に時代になると七草の一部に大混乱が生じます。
古今集以後台頭してきた「荻(おぎ)」の登場によって!

「荻」は七草ではありませんが、新古今の秋部では多数詠まれ代表的な秋の草花になっています。
303「夕暮れは 荻ふく風の 音まさる 今はたいかに 寝覚めせられむ」(具平親王)
304「夕暮れは 荻の葉むけを 吹く風に ことそともなく 涙落ちけり」(実定)
305「荻の葉も 契りありてや 秋風の おとづれそむる つまとなりけむ」(藤原俊成)

この「荻」。見てのとおり表記が「萩(はぎ)」とそっくりです。
※「くさかんむり」の下が、荻は「けものへん」、萩は「のぎへん」です。

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「萩」は万葉集でも最多登場(なんと150首弱の歌に登場)の花で、古くから日本人に愛されてきました。
そのせいでしょうか、「荻」が詠まれた歌をさらっと読み流した場合たいてい表記が似た「萩」で受け取ってしまいます。これは「おぎ」、「はぎ」とかな表記にしても同じようなもんでしょう。(この文面だけでもすでに混乱していませんか?)

ただ実物の姿かたち、育成の場所などはまったく異なります。
■下は「萩」
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■下は「荻」
2110643

ですので歌の情景を思い描けば「荻」と「萩」の違いに気づくことができる! 
と思いきや今度は別の問題が出てきます。

それは「薄(すすき)」との違いです。
実は「荻」と「薄」、見た目がそっくりなのです。
■下は「薄」
3330841

図鑑を開くと両者の見分け方が書いてあります。
例えば、薄には「芒(のぎ)」があり荻にはそれがない云々…
よけいにコンガラガッテ、早晩どっちでもいいやという感情に到達するのは私だけではないでしょう。

しかし、諦めることはありません。
実はこの「荻」「萩」「薄」を簡単に見分ける方法があります。
それは、それぞれ歌での詠まれ方で判断するのです。

当サイトで再々お話ししているとおり、和歌では草花の情景を赴くままに詠んだりはしません。
和のルールブック「古今和歌集」で定義された、その草花がもっとも美しく輝く情景の中で詠むのです。
桜のそれは散り様であり、梅はうぐいすとの取り合わせなどが代表的な例ですね。
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「荻」「萩」「薄」にもそれぞれの詠まれるべき情景が決まっていますので、それを手掛かりにするのです。
では早速、新古今和歌集の歌例を見てみましょう。

■荻
356「荻の葉に 吹けば嵐の 秋なるを 待ちける夜半の さお鹿の声」(藤原良経)

■萩
333「秋萩の 咲き散る野辺の ゆふ露に 濡れつつきませ 夜はふけぬとも」(柿本人麿)

■薄
349「花薄 またつゆふかし 穂に出でては なかめしと思ふ 秋のさかりを」(式子内親王)

このように、荻は「上葉を揺らす風」、萩は「葉に置く露」、薄は「白い綿毛の花」を詠むことが常套となっているのです。

これさえ知っていれば、「荻」「萩」「薄」恐るるに足らず!
したり顔で秋の歌を鑑賞しましょう。

(書き手:内田かつひろ)


 
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