2229423
春の花といえば? と問われれば、多くの人が「桜」、次点で「梅」を挙げることでしょう。

では秋の花といえば?
「萩」や「女郎花」、「尾花(すすき)」など秋の七草もあれば、重陽の節句に欠かせない「菊」の花もありますね。
→関連記事「秋の七草
→関連記事「菊の栄枯盛衰ストーリー

でもやはり一番は「紅葉(もみぢ)」ではないでしょうか。
※今コラムでは「紅葉」を様々な樹木の紅葉(こうよう)の総称として扱います

この記事の音声配信「第七回 紅葉を愛でるエトセトラ」を
Youtubeで聴く
iTunes Podcastで聴く

春の「桜」と秋の「紅葉」。
春秋の花の王様は、いずれも色とその移ろい、そして散りざまを愛でる点で共通しています。

71「残りなく 散るぞめでたき 桜花 ありて世中 はてのうければ」(よみ人しらず)
297「見る人も なくて散りぬる 奥山の 紅葉は夜の 錦なりけり」(紀貫之)

ただ、桜が「散り様の美学」一辺倒に対して、紅葉は多様な表情をみせます、そのとりどりの色のように。
今回は紅葉を愛でるエトセトラをご紹介しましょう。

紅葉。それは秋露や時雨まれに雁の涙で色づいていきます。
258「秋の夜の 露をは露と 置きながら 雁の涙や 野辺を染むらむ」(壬生忠岑)
259「秋の露 いろいろごとに 置けばこそ 山の木の葉の 千草なるらめ」(よみ人しらず)
260「白露も 時雨もいたく もる山は 下葉残らす 色づきにけり」(紀貫之)

月でさえ、その美しさを愛でる照明に過ぎません。
281「佐保山の ははそのもみぢ 散りぬべみ 夜さへ見よと てらす月影」(よみ人しらず)
289「秋の月 山辺さやかに 照らせるは 落つるもみぢの 数を見よとか」(よみ人しらず)
※月明かりで紅葉を鑑賞するなんて、現代のライトアップを先取りしていますね

いや、紅葉こそが月の光源なのです。
194「久方の 月の桂も 秋はなほ もみぢすればや 照りまさるらむ」(壬生忠岑)
※「月の桂」とは古代中国の伝説で、月にあるという巨大な桂の木のことです。ちなみに月桂樹(ローリエ)とは無関係です

道を隠すこともあります。
288「踏みわけて さらにやとはむ もみぢ葉の ふり隠してし 道とみながら」(よみ人しらず)
※紅葉の山をザックザックと踏み歩くの、気持ちいいですよね

それは幾色に風を染め、
290「吹く風の 色のちくさに 見えつるは 秋の木の葉の 散れはなりけり」(よみ人しらず)

水をも紅に染める。
293「もみぢ葉の ながれてとまる みなとには 紅深き 浪や立つらむ」(素性法師)
294「ちはやふる 神世もきかず 竜田川 唐紅に 水くくるとは」(在原業平)

鮮やかな絹織物にもなります。
296「神なびの 三室の山を 秋ゆけば 錦たちきる 心地こそすれ」(壬生忠峯)
297「見る人も なくて散りぬる おく山の もみぢは夜の 錦なりけり」(紀貫之)
※袿の「重ね色目」を楽しんだ平安貴族。ちくさに染まる紅葉をそれに例えるのは必然ですね
→関連記事「着物と和歌 ~袖は口ほどにものを言う~

紅葉は、秋そのものだったのです。
302「もみぢ葉の 流れさりせば 竜田川 水の秋をは 誰かしらまし」(是則)
311「年ごとに もみぢ葉流す 竜田川 みなとや秋の とまりなるらむ」(紀貫之)
※紅葉がとどまっているのを見て、「ここが秋の終点だろうか」なんて素敵すぎます!

さて、今年はどんな「秋」に出会えるでしょうか。

→関連記事「紅葉狩り、関東の竜田川を探せ!

(書き手:内田かつひろ)

 

平成和歌所から本が出ました。その名も「百人一首の歌人列伝」!
百人一首は歌ではなく「歌人を楽しむ」ものです。厳選した百人一首二十歌人の面白エピソードと代表歌をぜひ知ってください。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。

【目次】
・権中納言定家(藤原定家) 「怒れる天才サラリーマン」
・鎌倉右大臣(源実朝) 「甘えん坊将軍、鎌倉の海に吠える」
・在原業平朝臣(在原業平) 「愛され続けるプレイボーイ」
・和泉式部 「恋にまっすぐな平安ジェンヌ」
・紀貫之 「雑草が咲かせた大輪の花」
・凡河内躬恒 「麗しき二番手の真価」
・西行法師 「出家はつらいよ、フーテンの歌人」
・小野小町 「日本的、恋愛観のルーツ」
・源俊頼朝臣 「閉塞感をぶち壊せ! 孤独なチャレンジャー」
・式子内親王 「色と光を自在に操る印象派の女王」
#コラムその1 百人一首とは「王朝の栄枯盛衰物語」である!
・後鳥羽院 「お前のものは俺のもの、中世のジャイアン」
・菅家(菅原道真) 「悲劇の唇が吹く イン・ア・サイレント・ウェイ」
・崇徳院 「ここではないどこかへ」
・清少納言 「元祖! 意識高い系OLの可憐なる日常」
・柿本人麻呂 「みんなの憧れ、聖☆歌人」
・権中納言敦忠(藤原敦忠) 「禁断と破滅、平安のロミオとジュリエット」
・中納言家持(大伴家持) 「流れるままに。家持たぬ家持の万葉オシャンティー」
・後京極摂政前太政大臣(九条良経) 「天才貴公子が奏でるロンリネス」
・伊勢 「女貫之の冷たい仮面」
・能因法師 「元祖旅の歌人のノー、インドア宣言! 」
・皇太后宮大夫俊成(藤原俊成) 「和歌界のゴッドファーザー」
#コラムその2 百人一首は「ジジイのための歌集」である!

わくわく和歌ワークショップ はじめての古今伝授と連歌会

平成和歌所では、誰でも歌を楽しめる「あさぎいろ連歌会(Word Association Game)」を行っています。日本語の「ことばあそび」を存分に楽しみましょう。

和歌マニア♪ 日本文化の王道をあそび倒す! ラジオ 和歌マニア♪

古典和歌を爆笑エンターテイメントとしてトコトン遊び倒していく番組です。 ニンマリ笑って、けっこうタメになる! 和歌DJウッチーこと「内田かつひろ」と英語講師「ろっこ(rocco)」の鋭い突っ込みでお送りします。

Youtubeで聴く iTunes Podcastで聴く
「写真歌会 あさぎいろ」
あなたも和歌・短歌を詠んでみませんか? 平安歌人になりきって「和歌」と四季折々の情景(写真)をご披露いただけます。