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日本の春を代表する花、梅と桜。
これらの最大の違いってなんだと思います?

おそらく「花弁の形」または「花の付き方(花柄の有無)」なんて答える方が大半だと思います。
間違ってはいませんが、和歌的にいうとそれは違いになりません。

和歌的な桜と梅の最大の違い、
それは…

開花時期なのです!

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桜は春真っ盛りの頃、足早に咲いてはそそくさと散ってしまいます。ソメイヨシノという単一品種が跋扈する現代ではそれが特に顕著ですね。
ですから桜の歌群の大半は花の美しさを称える間もなく、散り様を惜しむことに終始しています。
→関連記事「桜の愛され方

一方の梅、これは品種の多様さもあって1月から4月にかけてゆっくりと花が楽しめます。
和歌の季節でいうと晩冬から仲春。時間をかけて景物と交わりながら多面的な美が歌に詠まれる、これが梅です。

まずは「雪」と梅。
335「花の色は 雪にまじりて 見えずとも 香をだに匂ほへ 人のしるべく」(小野たかむら)
336「梅の香の ふりおける雪に まがひせば 誰がことごと わきてをらまし」(紀貫之)
梅(白梅)が雪と紛れつつも、匂いでそれと分かるのです。

337「雪ふれば 木ごとに花ぞ 咲きにける いづれを梅と わきてをらまし」(紀友則)
「木」ごと(「毎」)の花で「梅」! という歌です。「山」と「風」で「嵐」と同じ発想ですね。
249「吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ」(文屋康秀)

やはり梅といえば「うぐいす」ですよね。
5「梅が枝に 来いるうぐひす 春かけて なけどもいまだ 雪はふりつつ」(よみ人知らず)
梅とウグイスの美しい叙景の中に、冬と春の交代劇がみられる歌です。

6「春たてば 花とや見らむ 白雪の かかれる枝に うぐひすぞなく」(素性法師)
13「花の香を 風のたよりに たぐへてぞ 鶯さそふ しるべにはやる」(紀友則)
32「折りつれば 袖こそにほへ 梅花 有りとやここに うぐひすのなく」(よみ人知らず)
梅とウグイスといえば花札もなっている抜群の取り合わせですが、実のところは…
→関連記事「梅と鶯のアヤシイ関係

そして「夜」の梅。
40「月夜には それとも見えず 梅花 香をたづねてぞ 知るべかりける」(凡河内躬恒)
41「春の夜の 闇はあやなし 梅花 色こそ見えね 香やはかくるる」(凡河内躬恒)
夜の闇に紛れても、芳香がその姿を知らせてくれるのです。

ちなみにこれが新古今の時代になると、、
「大空は 梅の匂いに 霞みつつ 曇りも果てぬ 春の夜の月」(藤原定家)
「梅の花 匂いをうつす 袖のうへに 軒もる月の 影ぞあらそふ」(藤原定家)
こんな幻想的な夜の梅が詠まるのです。いやぁつくづく美しい。

冒頭で桜と梅の違いをしましたが、このように花の「色(姿)」より「匂い」が愛でられることも、梅ならでは特徴ですね。
ですから、
46「梅が香を 袖にうつして とどめてば 春はすぐとも かたみならまし」(よみ人知らず)
春の思いでに梅の香りを留めておこう、なんて素敵な歌が詠まれるのです。

「梅」と「桜」あなたはどっち押しですか?
※ちなみに私は断然「梅」です。

(書き手:内田かつひろ)

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