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小野小町は9世紀に活躍した女性歌人。紀貫之による古今和歌集の「仮名序」では六歌仙という名誉ある歌人に選出され、おそらく最も名の知られた歌人です。
その存在感はとても大きく、現代でも美人を例えて「○○小町」などと評したり、誕生の地とされる秋田にちなんで秋田米の品種名を「あきたこまち」と名付けたり、秋田新幹線を「こまち」さらにサイヤ人ばりに「スーパーこまち」と名付たりと親しまれています。

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これだけの人物ですが、実は詳しいことはほとんど分かっていません。
その名が具体的に見えるのは前述した古今和歌集の「仮名序」くらいですし、絶世の美女とされるのもこの超有名な「花の色は…」の歌の妄想が後世に膨らんだからとも言われます。

とはいえ小野小町の歌が和歌ひいては恋愛観、特に女性のそれに絶大な影響を与えたという事実は明白です。

小町が与えた恋愛観…
それはひたすら「待つ!」というスタイルです。

「いやいや私は恋に積極的よ」という女性もいらっしゃると思いますが、多くの方は「自分から告白できない」というより「告白は男からするもの」という考えがなんとなくあるのではないでしょうか?
実はこの恋愛における「待ち」のスタンスは、小野小町が1000年以上も前に女性のあるべき美学として確立したものなのです。
この美学は恋歌のテーマとして連綿と受け継がれ、和歌が廃れた現代でも日本女性の奥ゆかしき「美徳」として生きてます。

今回はその恋歌を中心に小町の歌を見てみましょう。
1000年以上も前の歌ですが、現代でも十分共感できる女心に驚きを覚えます。

小野小町の十首

(一)「花の色は うつりにけりな いたづらに わか身世にふる ながめせしまに」(小野小町)
老いという抗えない運命に身をやつす女…、百人一首にも採られ小町いや和歌を代表する歌です
実はこの歌、小町が古今和歌集で採られた唯一の「四季歌」です。もちろん素晴らしい歌ですが、この歌だけでは、小町本来の魅力は味わえません。小町といえばやはり「恋歌」です! 以下の恋歌をぜひ鑑賞てみてください

(二)「思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを」(小野小町)
あの人のことを思いながら寝たから夢で逢えたのだろか? 夢とわかっていればそのまま目覚めなかったのに…
現代でも十分共感できる切ない女心ですね

(三)「うたたねに 恋しき人を 見てしより 夢てふ物は 思みそめてき」(小野小町)
うたたねに愛しい人を見ていらい、夢というものを当てにするようになってしまった…

(四)「いとせめて 恋しき時は むば玉の よるの衣を 返してぞきる」(小野小町)
昔は衣(服)を裏返して寝ると、夢で愛しい人に逢えると言われていました。一種のおまじないですが、恋に悩める乙女のやることは今も昔も変わりません

(五)「おろかなる 涙ぞ袖に 玉はなす 我はせきあへず たぎつ瀬なれは」(小野小町)
泣くと言ったってあなたの涙は「玉」程度かもしれないけど、私は「滝」よ!

(六)「秋の夜も 名のみなりけり あふといへば 事そともなく あけぬるものを」(小野小町)
秋の夜長、何て言うけど名前だけね。愛しいあなたと一緒にいればあっという間に朝になってしまうわ…
小町の恋歌でほぼ唯一といっていい、愛しい人との歓喜の歌です

(七)「うつつには さもこそあらめ 夢にさへ 人めをよくと 見るかわびしさ」(小野小町)
そりゃ現実で冷たくされるのはしょうがないわよ、でも夢の中でさえ避けるってどういうこと?

(八)「夢路には 足も休めず 通へぢも うつつにひとめ 見しことはあらず」(小野小町)
夢の中では毎日通ってくれるけど、現実は全く来ないってどういうこと?

(九)「今はとて わか身時雨に ふりぬれば 事のはさへに うつろひにけり」(小野小町)
もうお別れだ、といって私が年をとったら、あなたの言葉も色あせてしまったわ

(十)「色見えで うつろふ物は 世中の 人の心の 花にぞ有りける」(小野小町)
色が見えないで褪せてしまうものは、人の心の花だったのね
小町の言葉には重みを感じます

見てお分かり頂けたように、小町の歌には「夢」が多く登場します。
それは「夢」が、ひたすら待ち続ける女性の唯一の「希望」だからです。
→関連記事「小野小町と余情妖艶

この恋愛観、なんとももどかしい感じです。
ちなみに男性は「忍ぶ恋」です。男女がこんなスタンスでは、恋愛の成就は難しいですよ…

(書き手:内田かつひろ)

→一覧「一人十首の歌人列伝

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