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在原業平は平城天皇の孫であり、六歌仙に名を連ねる凄腕の歌人です。
古くから色好みの貴公子として名を馳せてきました。

業平の活躍は史実ではなく「伊勢物語」の中で見られます。
「伊勢物語」は全125段のショートストーリーからなる恋物語で、その主人公である「昔男」が在原業平であるとされているのです。
ちなみに「伊勢物語」、「源氏物語」、「古今和歌集」を日本の三大古典と言ったりします。

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さて、「伊勢物語」の昔男、業平は歌を通じて様々な女性との情事を重ねます。
その中には清和天皇妃である二条の后(藤原高子)や伊勢斎宮である恬子内親王の名も…
奔放で恐れを知らぬ男の恋は、愛しい気持ちにまっしぐら!
「色好み」といえばスマートに聞こえますが、まあ要するに、女にうつつを抜かしてばかりの「ダメ男」ですね、在原業平という人は。

でもこの業平のファンはすこぶる多い。
業平の歌なのか、キャラクターなのか、その生き様なのか?
伊勢物語と在原業平の世界に憧れてオマージュ作品を残したアーティストの例は、和歌に限らず本当に沢山あります。

今回は業平の歌の中でも、特に人気のある十首をご紹介しましょう。

在原業平の十首

(一)「起きもせず 寝もせで夜を あかしては 春の物とて ながめ暮らしつ」(在原業平)
春は起きるでも、寝るでもなくボーっと過ごすのです。恋する女のことを妄想して…

(二)「人知れぬ 我が通い路の 関守は よひよひごとに うちも寝ななむ」(在原業平)
俺の恋路をじゃまするあのヤロウ、邪魔すんじゃねぇ! 
藤原高子(後の清和天皇の女御)邸の門番もなんのその。恋愛道を突っ走る業平に恐れるものはありません。

(三)「唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞ思ふ」(在原業平)
伊勢物語第九段、東下りのワンシーン。「かきつばたといふ五文字を、句の上に据ゑて、旅の心をよめ」とのお題に応え詠んだ歌です。各句頭をつなげると見事に「か・き・つ・ば・た」と折句になっています。
このシーンを題材とした作品を多く残したのが琳派の代表格尾形光琳です。蒔絵の硯箱に屏風絵、光琳デザインにアレンジされた伊勢物語は必見です!

(四)「名にしおはば いざ事とはむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」(在原業平)
こちらも第九段、東下りから。このエピソードは今に生きています、隅田川に架かる言問橋がそれです。それにしても遠くまで来たものですね、業平一行は。

(五)「徒歩(かち)人の 渡れど濡れぬ 江にしあれば 又あふ坂の 関はこえなむ」(在原業平)
こともあろうに業平、伊勢斎院である恬子内親王に手を出します。斎院には不浄が求められましたから、業平はタブーを犯したことになります。
そんな大それたことをしつつも、「あんたとは浅い関係だったな、また逢おうぜベイビー」って。
すげーな業平。。男が惚れるのも分かります。

(六)「数々に 思ひ思はず とひがたみ 身をしる雨は ふりぞまされる」(在原業平)
この歌のキーワードは「身を知る雨」です。平安時代、女の家に男が通うのが当然でした。雨の日はどうしたんでしょうね? もちろん電車も車もありません(牛車はおいといて)から、歩いていくとなると雨でぐっしゃぐしゃに濡れるはずです。そこで「身を知る雨」です。ぐしゃぐしゃに濡れても私に逢いに来るのか、来ないのか? そこまで愛しているのか、いないのか? 女が男に問うているのです。業平ならもちろん、ぐっしゃぐしゃを選びますよね?

(七)「年をへて 住みこし里を 出でていなば いとど深草 野とや成なん」(在原業平)
「俺が出ていったら、ただでさえ草深い里が野っ原になっちまうだろ」と別れを告げる業平に対し、女は「野となったら鶉となって鳴いています。狩りに来てくださいますか?」と返します。こんな健気なことを言わせるなんて、噂通りのプレイボーイです。
この歌とエピソードは後の歌人達に愛され、幾歌の本歌になりました。かの御大藤原俊成はこの歌の後日談として「夕されば 野辺の秋風 身にしみて 鶉鳴くなり 深草の里」と詠み、生涯一の出来栄えであると誇っています。

(八)「世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」(在原業平)
六歌仙の面目躍如。紀友則の「ひさかたの ひかりのどけき 春の日に しずこころなく 花の散るらん」と双璧を張る古今和歌集の桜歌です。
ただこれまでの所業を見ると、「花」は「女」の意にしか思えません。この世に女さえいなかったら平穏な人生なのに…とね。

(九)「ちはやふる 神世もきかず 竜田河 唐紅に 水くくるとは」(在原業平)
百人一首にも採られ、少女漫画のタイトルになった有名な歌です。ちなみにこの歌がネタの落語「ちはやふる」をご存知でしょうか? 「竜田河」は力士の四股名となり、「ちはや」は… まぁとにかく、爆笑ものですからぜひ一席聴いてみてください。

(十)「月やあらぬ 春や昔の春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして」(在原業平)
月も春も変わっているのに、私だけは変わらない。六歌仙らしく、なんとも思慮深い歌です。普段だらしなくても、たまにこういうかっこいいい歌を詠んでみちゃうのが業平の魅力です。

(書き手:内田かつひろ)


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