見立てとは、ある対象を別のものに言い換えて表現することです。
取り立てて難しい話ではなく、日本一高い電波塔を空まで届く木になぞらえ「スカイツリー」と命名するようことです。

見立ては昔からよく用いられてきました。それは和歌に限りません。
茶の湯では、かの千利休が水筒用のひょうたんを花入として見立て用いた、など逸話が多く残っています。
そして日本庭園。
池を海に、その中の岩を島に見立てる。垂直に立てた岩を滝に見立て、そこに鯉の滝登りに見立てた鯉魚石を配する。さらに枯山水では、砂の文様を水の流れに見立てる。
これぞ見立てのオンパレード!
ただこれらの見立ては、条件が限られた故の「やむを得ない見立て」であったかもしれません。

和歌の場合は違います。
想像という制限のない中で、“より美しい表現”を求めて見立てを用いるのです。

例えば以下の和歌。
「霞たちこのめもはるの雪ふれば 花なきさとも花ぞちりける」(素性法師)
暦は初春。雪を花に見立て、新緑の里に花が舞い散る優美な場面を歌い上げています。

そして極み付けは下の一首。
「さくら花ちりぬる風のなごりには 水なきそらに浪ぞたちける」(紀貫之)
桜の花びらを浪になぞらえ、水のない空に浪が立っているという、古今和歌集いや世界の詩歌でも最上の想像美を作り上げています。

このように見立ては、和歌をずいぶん魅力的なものにします。
とはいえ、闇雲に見立てを駆使すればいいというものではないようです。
実は古今和歌集で使われている見立てには、それほどバリエーションが多くありません。
以下が、よく使われている見立てです。
・雪→花
・浪→花
・雨→涙
・露→玉
・女郎花→女
・紅葉→錦

最後に面白い見立ての例として2首上げておきます。
「春の日のひかりにあたる我なれど かしらの雪となるぞわびしき」(康秀)
白髪が雪に見立てられています。あまり雅には思えません。。。

「秋風にこゑをほにあけてくる舟は 天のとわたる雁にぞありける」(藤原菅根)
雁が舟に見立てられています。雁の群れでしょうが、かなり斬新な見立てですね。

(書き手:内田かつひろ)

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