今回は古今和歌集成立の背景に迫りたいと思います。

古今和歌集は醍醐天皇の勅命により905年に奏上されました。
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ちなみに万葉集の成立は8世紀中頃といわれています。
和歌の歴史における、この空白の150年には何があったのでしょう?

それはいわゆる「漢風謳歌」また一方「国風暗黒時代」などと呼ばれ、中国文化全盛の時代だったのです。

和歌は表舞台から去り、紀貫之曰く
『色好みの家に、埋もれ木の人知れぬこととなりて』(古今和歌集 仮名序)
という無残な状況に陥っていました。

8~9世紀、日本は遣唐使を派遣して中国文化の需要を盛んに行いました。
これにより日本の文化レベルも飛躍的に高まっていきます。
例えば文字。
これまでは万葉仮名といって、日本語に漢字の音を無理やりに当てた文字をせいぜい扱える程度でしたが、
万葉集以後には漢字を崩し日本人の感覚にあった「ひらがな」という独自の文字を生み出すに至ります。

文字を自在に操れるようになると、ついに憧れの「漢詩」をも自分たちで作るようになりました。
それが勅撰漢詩集(凌雲集、文華秀麗集、経国集)となって結実します。

明治期に欧米を懸命で追いかけたように、平安初頭の日本は中国唐の文化水準を目指し必死な時代だったのです。
そんな折、和風に回帰するきっかけはなんだったか?

国風文化の誕生は「遣唐使が停止されたから」ということを聞きます。
たしかに遣唐使の廃止は894年ですから、その後国風に傾いたということは言えるでしょう。

ただその廃止理由ですが、日本が「中国との交流が不要になるほど立派に成長した」という積極的なものではなく、
黄巣の乱によって「情勢が不安定になった唐との交流を避けた」という、ある意味仕方ない理由で廃止したのです。
本当はもっと唐との交流を続けたかったのではないでしょうか。

ではこの漢風文化の影響が色濃く残る時代10世紀初頭に、
古今和歌集はいかなる理由をもって揚々と誕生をみたのか?

ずいぶん引っ張ってきましたが、私の答えはこうです。

それは「藤原氏の策略」です!

藤原氏は良房の時代、後宮に入内した娘明子が生んだ子が天皇に即位します(清和天皇)。
外戚の良房による摂関政治がここに始まります。
52「年ふれば よはひはおいぬ しかはあれど 花をし見れば もの思ひもなし」(藤原良房/前太政大臣)

しかしこの安定的な政治基盤を危うくする存在がたびたび現れました。
それが伴善男であり菅原道真です。

特に菅原道真は右大臣にまで昇進し、時の権力者藤原時平と肩を並べるまでになりました。
その後は歴史に知られるところですが、時平に告発された道真は太宰府に左遷させられてしまいます。
「こち吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春を忘るな」(菅原道真)

危険分子の排除には成功しましたが、またいつ自分達を危うくする存在が現れるか分かりません。
その芽は事前に摘んでおく必要がある…
家格の低い菅原道真の昇進を許したもの…

それが「漢詩」なのです!
中国律令制の科挙における試験には「作詩」があり、詩を作ることが官僚の必須知識でした。
日本式律令制を取り入れていた日本でも、おそらくこの作詩能力は昇進に影響があったのだと思います。

道真は幼少より詩歌に才能があり、若くして文章生になるとあれよあれよと出世の階段を登りました。
この「漢詩」を潰し、自分たちの都合のいいもの転換しようと考えたのです。

藤原氏がに都合のいいもの…
それが「和歌」だったのです!

和歌は万葉集以後、表舞台からは姿を消しましたが、
後宮を中心に男女のコミュニケーションツールとして、依然として盛んに詠まれていました。
「かな文字(女手)」などは和歌の発展によって誕生したといって過言ではありません。

この和歌を漢詩に取って変える。
後宮文化という自分たちのホームで戦えば、アウェイである他氏族を排しやすい。
策略に長けた藤原氏はこう考えたのではないでしょうか。

つまり古今和歌集は、
遣唐使の廃止による「国風文化の高まりによって誕生」したのではなく、
菅原道真など特に漢風文化の知識人に恐れをなした「藤原氏が進めた我田引水」の産物なのです。

と、ある種陰謀論みたいな話しとなりましたが、
まんざら間違っていないとも思いませんか?

(書き手:内田かつひろ)
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